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カラーを活かすコラム

羊のハンマーが鋼の弦を叩く

図書館で借りてきた「羊と鋼の森」宮下奈都 著(文藝春秋)

 

高校生の時、学校の体育館でグランドピアノを調律する調律師の姿を見てから
調律の世界に魅せられた主人公。
調律師として楽器店に入社し仕事をする中で出会う、ピアノを愛するふたごの姉妹や先輩、恩師との交流を通じて、成長していく青年の姿がていねいにあたたかに描かれています。

 

「羊のハンマーが鋼の弦を叩く。
それが音楽になる。

 

風の通る緑の原で羊たちがのんびりと草を食んでいる。
いい羊がいい音をつくる。
それを僕は、豊かだと感じる。」

 

「最初はただの音だったのに、板島さんが調律し直した途端に艶が出る。
鮮やかに伸びる。
ぽつん、ぽつんと単発だった音が、走って、からまって、音色になる。
ピアノってこんな音を出すんだっけ?
葉っぱから木へ、木から森へ、山へ。
今にも音色になって、音楽になっていく。
その様子が目に見えるようだ。」

 

きれいな言葉のフレーズが、たくさんつまった小説です。

No.64