「もう中学生になるんだから
泣かないようにしましょうね」
習いにいっていたというより泣きにいっていたと言っていいほど
ピアノ教室では毎回泣いていました。
練習もせずに行くので、できないのはあたりまえなのだけれど
怒られると思う気持ちと、できない自分を情けなく思う気持ちと。
決して泣けば済むと、あざとく考えていたわけではなく
ピアノに限らず、とにかく、じわーっと静かによく泣いていて。
そのときは、本当に他に感情を出すこともなく
泣くことしかできなかったのです。
そして、きっと見るに見かねて、先生が一言。
もう泣くなと。
その日の帰り道は、いっしょに習っていた同級生に八つ当たりして別れ
ひとり大泣きしながら帰りました。
そして、その日を境に、泣かなくなりました。
ピアノのレッスンに限らず
どんなときも泣かなくなりました。
その時なにを思ったのかは、忘れてしまいましたが
そのピアノの先生の一言のお陰で、わたしは一つ強さを身につけました。
No.27